Biomod/2013/Komaba/Project

Background of Project

DNA Screwプロジェクトの目標は、DNAのみで回転するモーターを作ることです。生体分子を利用して自発的に動く仕組みに関しては、モーター蛋白質Kinesinの研究やDNAの「歩行」運動、あるいは昨年度のTitech Nano-Jugglersが発表したBiomolecular Rocketなど、これまでに数多くの研究が行われてきました。しかし、DNA純正で回転運動を実現したものはありませんでした。

回転運動をする機構、すなわちモーターは、高い応用可能性を秘めています。例えば実生活のスケールの世界では、スクリュー、自動車、洗濯機、時計、ファン、果てはゲーム機のコントローラーなど、あらゆる場面で用いられています。私たちは、この回転運動をDNAのスケールでも実現することで、今後のDNAエンジニアリングの幅が大きく広がるのではないかと考えました。

当然のことながらDNAモーターは、実生活スケールのそれとは、そのメリットや活用範囲も大きく異なってきますが、それでも数多くの可能性を秘めています。DNAモーターを自由に制御する技術が完成すれば、既存のセンサーなどと組み合わせて、完全自立型の分子ロボットを作ることもできるかもしれません。以降、モーターの構造の説明や活用方法のアイデアを紹介します。

Project Overview

DNA Screwプロジェクトで製作するモーターは、回転を支える軸となるシリンダー、回転運動を生み出すDNA Spider、実際に回転することになるリングの3つの要素から構成されています。プロジェクトはまず第一段階として各要素のモーターへの適性を実験によって確かめます。そして第二段階で各要素を結合し、一つのモーターを作り上げます。各要素の具体的な構造や仕組みは、>>read moreからDesignを参照してください。

Cylinder

Cylinderは回転を支える軸として、モーターの中心に置かれます。DNA Origamiの技術を利用してDNAを円筒形に整形し、その表面にDNA Spiderの足場をらせん状に結合します。この足場を順にたどっていくことで、DNA Spiderはシリンダー上を周回できるようになっています。>>read more

DNA Walker

回転運動の動力の源泉となるのが、このDNA Spiderです。DNA Spiderとは、特定の塩基配列を持った足場と結合・切断を繰り返して進むDNA Walkerを3つつなげてより強固にしたものです。Cylinderの足場を周回しながら、DNA Ringに回転運動を伝達します。

Rotate Ring

実際に回転するのはこのDNA Ringの部分になります。リングあるいは円盤の側面のような形状をしており、整形にはCylinderと同様にDNA Origamiの技術を利用します。この内側にDNA Spiderをつないで、DNA Spiderの移動にRingも連動することになります。

Motor

上述の三要素の結合、即ちCylinderとRotate RingをDNA Spiderを仲介させてつなぐことで、モーターの回転運動が実現されます。電気工作で用いるモーターなどとは異なり、軸を固定された中心として周囲が回転します。この動きを応用することで、Vision for the futureのようなものが実現可能になります。

Another Structure

今回実験するのはDNA Spiderの移動をシリンダーとリングを通じて回転運動に転換する仕組みです。これでは、沢山回転するにはCylinderを非常に長くしなければいけません。DNA Spiderの移動の動力を転換する際に、これ似たような少し違った機構で行うことで、持続的な回転運動をより容易にするなどの特徴を持たせるアイデアもあります。